コラム

2015.10.06.「見えないのに見える」空間認識力

暗闇演劇では、スタッフがお客さんの安全を確保するために観客席に向かって暗視ゴーグルを構えて見ています。
すると、非常に面白いことがわかります。 最初はセリフのある役者がいる方向を観ていたお客さんが、突然、無言で舞台の上手から登場する役者の方を観たりするのです。
役者が客席の中を歩いて登場するシーンでは、それまで通路側に身体を出してリラックスしていたお客さんが、役者が声を発する前に気配を感じてちゃんと通路を開けてくれたりもします。これは大きな発見でした。

稽古場で1カ月近く暗闇演劇の練習をしていると、役者は他の人が歩いている風圧から距離がわかったり、自分が吐く息が反射する感覚で壁との距離を測れるようになってきます。
さらに、舞台上にいる役者の声の大きさで舞台上の立ち位置をぴったり決めることができるようになります。
大川興業の舞台では、「3歩歩いてから振り向く」とか、「この音をきっかけにセリフを言う」という演出はしていません。
役者が自然に振り向く気持ちになった時に振り向くとか、セリフを言うべきタイミングを感じたらセリフを言うとか、役者の気持ち優先で演出をしています。
たとえ照明が当たるタイミングや立ち位置が間違っていたとしても、「自分が照明を曲げて自分の方に引っ張ってくるぐらいの気持ちで芝居をしろ」と言っています。普段からそうした演出をしているからか、大川興業の舞台に出演する役者はかなり空間認識力が高くなっています。

ところが全く暗闇での訓練をしていないのに、そうした空間認識力を一瞬にして発揮するお客さんもいるのです。 暗視ゴーグルで舞台を見ると、そのことが非常によくわかります。
大川興業の暗闇演劇では、お客さんからは見えないけれど、むしろ目に見える演劇よりも役者や観客が縦横無尽に動いています。 信じられないかもしれませんが、本当です。

きっと皆さんも暗闇演劇を暗視ゴーグルで見てみたいと思うでしょう。
しかし、これはあくまでも暗闇演劇なので、役者の動き、お客さんの動きをお見せすることはできません。 本当に残念です。

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<大川総裁と暗視ゴーグル>